世界で唯一セイコーしか作る事が出来ない仕組みスプリングドライブは、機械式腕時計の一次動力と輪列を持ちながら、クォーツの精度を試す画期的なハイブリットウォッチです。
スプリングドライブ開発の歴史
1977年セイコーは機械式腕時計にクォーツの精度を加えると言う構想を考え付きました。
しかし、それには様々な問題がありました。1982年開発を開始し、1998年に世界に向けて発表されるまで、技術的困難を克服する為、実に20年以上の月日を要する事になります。
そして翌年1999年手巻きタイプが、その後自動巻き、そして2004年GS(グランドセイコー)に搭載されることになりました。
時計の「動力」と「制御システム」
ここでは機械式、クォーツ、スプリングドライブの動力と制御システムについて説明します。
機械式時計
- 「動力」は主ぜんまい(解ける力を利用)
- 「制御システム」はテンプの振動を利用
- ぜんまい駆動でトルクは大きい。精度は標準的なもので誤差が日に10~30秒
クォーツ時計
- 「動力」は電池
- 「制御システム」はクォーツ
- 標準的なもので誤差が月に15秒程度。電気による駆動でトルクは小さい
スプリングドライブ
- 「動力」主ぜんまい
- 「制御システム」クォーツ
- ぜんまい駆動の為、トルクが大きい。誤差は月に15秒程度
時計の「動力」と「制御システム」を見て頂いてわかるように、スプリングドライブは機械式時計のトルクとクォーツ時計の高精度と言う長所を併せ持ったハイブリットな時計です。
トルクが大きい事のメリットは、パワーがあるので時刻表示以外の「機能を追加しやすい」大きな針や日付ディスクを採用する事も可能な為、「デザインの自由度が増す」と言う効果があります。
スプリングドライブの構造
スプリングドライブの仕組みは、動力と駆動輪列までは手巻き式と同じ作りで、主ぜんまいはリュウズによって巻き上げられ、主ぜんまい→二番車→三番車→四番車(駆動輪列・示時輪列)へと動力が伝えられます。
クォーツ式時計は、電池→標準機(水晶振動子)→五番車→四番車→三番車→二番車(示時輪列)と言う流れに対して、スプリングドライブは、機械式と同じ流れになります。
しかし、機械式では標準機がテンプだったのに対して、スプリングドライブではこれが(水晶振動子)になります。
このあと四番車の回転運動は、増速輪列を経由し発電ローターに伝えられます。
発電ローターは、回転する事でキネティックと同じようにコイル内で電圧差を生み(磁束の変化を生み)発電します。
この電力がIC(制御集積回路)を駆動し、水晶振動子を発振させ、水晶振動子は1秒間に32768回振動(32768Hz)します。
水晶振動子の振動情報は集積回路にフィードバックされ、集積回路は電子調速機(分周回路)を制御して発電ローターを1秒間に8回転させ、1秒間に8回の信号(8Hz)に変換し8Hzの周波数で一定の基準信号を出します。
集積回路は、通常のクォーツ式時計では水晶振動子の振動情報をフィードバックされたあとパルス信号でステップモーターを制御し運針させていたのに対し、スプリングドライブでは電子調速機に電磁ブレーキをかけたり外させたりして基準信号の8Hzに合うように発電ローターの回転を制御します。
この結果、ぜんまい→ローター→歯車→針の順に制御された動きを伝え、正確な時を刻む事が可能です。
まとめ:スプリングドライブの特徴
エネルギー源がぜんまいであるため、一次電池や二次電池など大きな電気エネルギーを蓄積する部品がありません。
またクォーツ時計のようなステップモーターもありません。
ぜんまい駆動でありながら時間基準は水晶振動子なので、月差15秒以内とクォーツ式と同等の高い時間精度を実現しています。
秒針はクォーツのような1秒ごとに時間を刻むステップ運針や機械式時計のようなビート運針でもなく、スイープ運針をします。
運針はモーターではなく、ぜんまいのトルクで行う為、長くて太いしっかりとした針も使用する事が可能です。
電池切れの心配があるクォーツと違い、機械式時計同様、長く時計を使えます。
いかがですか?このハイブリット感が世界で唯一セイコーだけが作れる技術の結晶です。
機械式時計とクォーツ式時計のハイブリット、それを形にしたものがスプリングドライブ構造なのです。
スプリングドライブを使ってみたい!という方は、腕時計のレンタルサービスを利用してみてはいかがでしょうか。
購入ではなくレンタルなので、とりあえず1度試してみたいという人におすすめです。
下記の記事に時計レンタルサービスについて詳しく書いているので参考にしてみてください。